こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。
肺がんの治療では、「免疫チェックポイント阻害薬」という薬が使われることがあります。これは、体の免疫を活性化させてがんを攻撃する仕組みの薬です。
ただし、この免疫を高める薬は時に「免疫関連有害事象」という副作用を引き起こし、治療を中止せざるを得なくなることもあります。
では、そうした「副作用のために免疫薬を途中で中止した人」にも、治療効果がその後も続く人がいるのはなぜなのでしょうか?
2025年4月、米国のがん専門誌『Clinical Cancer Research』に、その疑問に答える研究が掲載されました。
この研究では、進行非小細胞肺がんの患者さん2,794人のうち、免疫関連有害事象のためにICIを中止した271人を対象に、治療中止後の病気の進行を抑える力)がどのような要因と関係しているかを詳しく調べました。
【結果:中止までの治療期間が長いと効果が続きやすい】
免疫チェックポイント阻害薬の投与期間が長い人ほど、治療中止後も病気の進行を抑えられる期間や、全体の生存期間が長いという結果でした。
例えば、免疫チェックポイント阻害薬を
3か月未満で中止した人と、6か月以上続けた人の方が、がんを制御できた期間が長かったです。
【免疫チェックポイント阻害薬をやめても、効果が長く続く人の特徴】
研究から見えてきた、「ICIを中止しても効果が続きやすい人」の特徴は以下のとおりです:
治療期間が長かった(特に3か月〜6か月以上)
ICI治療によって、がんが縮小していた
腫瘍のPD-L1の発現が50%以上
非扁平上皮型の肺がんである
まとめ
免疫チェックポイント阻害薬は、副作用のために中止せざるを得ないこともありますが、
「中止までに十分な期間使えていた」「がんがよく反応していた」「PD-L1が高かった」などの条件を満たす方は、
その後も長期間にわたってがんを抑える可能性があるということが、この研究で示されました。
これらの情報は、今後の治療選択や、治療中止後の経過を見守るうえでも大きなヒントとなると思います。
そして、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を高くする工夫は、こちらでも解説しています。
参考論文