こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。
以前に、咽頭がんの患者さんから、以下のようなことを言われました。
「手術をすると、声を失うことになるし、絶対に嫌です。光免疫療法を受けてみたいです。どうしたら良いですか?」
光免疫療法は、喉頭がんに対して、保険適応になっています。そして、体に優しい治療というイメージを持たれている方も多く、このような質問を受けることがあります。
そのことに関する結論ですが、優しくはないと思います。それなりに体に負担がかかるので、慎重にやらないといけない治療です。
どのような手順の治療かと言いますと、
1、がんだけに集まる、光を吸収する増感剤というものを体内に注入します。
2、喉頭がんの場合は、アキャルックスという薬剤です。そこに光を照射して、がんを壊死させます。
光を照射してすぐに、がん細胞が死に、劇的な縮小をすることも、かなり期待できます。
しかし、その際に、周囲の組織も壊死することがあります。
例えば、血管が壊死すれば、大出血を起こしますし、皮膚が壊死すれば、皮膚に欠損ができて、皮膚から内臓が見えるようになります。
したがって、このような副作用が出ない方にしか、光免疫療法をできないのです。そうなると、実際に光免疫療法を受けられる方は、かなり僅かなのです。
このような光免疫療法は、現在は、保険診療において、頭頸部がん(咽頭がんなど)に対してのみ行われています。
2024年10月現在において、そして、食道がん、胸膜中皮腫、子宮頸がん、胃がん、乳がん、膀胱がんに関しては、臨床試験が計画中(もしくはすでに進行中)です。
一方で、これとは違う光免疫療法が、自由診療の世界では、やられています。
インターネットで「光免疫療法」と検索すると、どちらかというと、そちらの治療ばかりを目にします。
残念ながら、保険診療で行われる光免疫療法に比べれば、効果はかなり落ちます。
先ほどの治療とは違い、副作用はほとんどない分、治療効果も軽度であるということです。
つまり、少し小さくなることは期待できることもありますが、劇的な効果は難しいということです。さらに、光が届かない部位には、この治療の適応はありません。
したがって、自由診療における光免疫療法を取り入れるとしても、その治療だけ出なく、他の治療法も併用しないといけないのではと、私は考えています。
今後も光免疫療法は、もっと発展する余地はあると思いますので、副作用が少ない上に、治療効果もドカンと出るようなものが開発されると良いですね。