こんにちは。加藤隆佑と申します。
札幌の総合病院でがん治療を専門にしている医師です。
本日の本題に入らせてもらえればと思います。
がんによる腹水が溜まりすぎて、抗がん剤もできない。余命は数日かもしれない。
がんによる腹水で、お腹が張って辛い。
そんな時に、検討すべき価値のある治療法があります。
それは、KM-CART療法です。
KM-CARTにより腹水を取り除き、食欲もアップ。そして、抗がん剤を受けられるくらいの体力になることも、期待できます。
腹水を制御できれば、もっと長く元気にいきていくことが、できます。
本日は、10000例以上のKM-CARTの実績があり、KM-CARTの考案者でいらっしゃる松崎先生に、がん性腹水に対するKM-CART療法の記事を監修していただきました。
(要第二クリニックのホームページ(http://www.kanamecho-hp.jp/clinic_daini/fukusui/genjyou.html)より画像を引用)
腹水とは?
お腹の中には、健康な人であっても、20から50ccの腹水が存在します。
そして、がんが、腹膜に播種して、腹膜というところで炎症がおきると、腹水が増えます。
その結果、お腹がパンパンになって、苦しいという症状がでることがあります。
治療が難しい腹水のKM-CARTによる治療とは?
腹水が増え始めたときには、利尿剤によって、腹水を減らすことを試みます。しかし、利尿剤を投与しても、腹水が、減らないことがあります。
そのような場合は、難治性の腹水ということになります。
そのような場合の対処法で主流なのは腹水濾過濃縮再静注法 (CART療法)です。
CARTとは?
お腹に小さなストローみたいなものを刺すことにより、腹水を外にだします。
その腹水をろ過して、栄養成分と免疫成分だけを抽出して、体の中に戻します。
保険診療では2週に1回行うことができます。
(要第二クリニックのホームページ(http://www.kanamecho-hp.jp/clinic_daini/fukusui/genjyou.html)より画像を引用)
従来のCARTの改良型で、より安全なKM-CART
従来のCARTでは、多量の腹水を処理できません。。
仮に、多量の腹水を抜いても、数リットル前後で、ろ過のための膜が閉塞し、腹水処理が不可能になってしまうことが多いからです。
その結果、せっかくたくさんの腹水を抜いても、そのうちの一部の腹水しか、体内に濃縮還元ができないのです。
体に戻せなかった腹水は、破棄することになります。つまり、大切な栄養成分と免疫成分を捨てることになってしまいます。
そして、従来のCARTの改良したのが、KM-CARTです。
より安全で、効果的です。
10リットルや20リットルの腹水でも、処理が可能です。
松崎先生に治療をしてもらった患者様の事例をご紹介いたしますね。
(要第二クリニックのホームページ(http://www.kanamecho-hp.jp/clinic_daini/fukusui/genjyou.html)より画像を引用)
この方は、20リットル程度の腹水がありました。
(要第二クリニックのホームページ(http://www.kanamecho-hp.jp/clinic_daini/fukusui/genjyou.html)より画像を引用)
こちらの方は、8.6リットルです。
このような量の腹水は、従来のCARTでの処理は難しいでしょう。
KM-CART療法のメリットとは?
・採取した腹水の有効成分であるアルブミンや免疫成分を、捨てることはなく、すべて有効活用できます。
・卵巣がんのような粘度の高い腹水や、血性腹水でも、濃縮ろ過できます。
・腹水を限りなく、0に近づけることができます。
ただし、腹膜の炎症は残っているので、再び腹水が増えることになります。
そこで、腹水を抜きつつ、同時に抗がん剤治療をしていくことで、腹水を抜く頻度を減らすことができます。
従来のCARTとの違いは?
従来のCART療法ですと、少量の腹水であれば対応できるのですが、多量の腹水に対応できないのが、問題点となります。
多量の腹水を従来のCARTで対処するときは、以下のうちのどちらかになります。
・多量の腹水のうちの一部のみ抜いて、ろ過濃縮して体内に戻す。
・多量の腹水を全部抜き、ろ過できるところまでの腹水を体内に戻す。ろ過できなかった腹水は破棄する。
卵巣がんのような粘性の腹水は、すぐに詰まってしまい、従来のCARTでの対応は非常に難しいです。
KM-CARTのメリットは他にもあります。
濃縮濾過した腹水を、体内に戻す時に生じることがある発熱の頻度を減らすことも、大きなメリットです。
その理由は、腹水へのストレスが少ない方法で、濃縮濾過することができるからです。
腹腔内のがん細胞を、減らすこともできます。
腹腔内化学療法においても、よい濃い状態で、抗がん剤を、がんのところに到達させることができるようになります。
ちなみに、CART全般の副作用として、5%以上の確率で、発熱、悪寒がでます。
しかし、一時的なものですので、問題はありません。1%未満の頻度になりますが、血圧上昇、頭痛、眠気があるとされています。
少量の腹水であれば、従来のCARTでも大丈夫でしょう。
しかし、多量の腹水の場合はで、KM-CARTによる治療を受けられるときは、そちらを選んでください。
編集後記
最後に、zoomで私と松崎先生で対談をしております。その内容も、ご紹介します。
加藤医師)
記事を監修してくださり、ありがとうございました。
がんによる腹水に対して、KM-CARTがとても有望な治療の1つであることを知ることができました。ありがとうございます。
そして、先生の御施設に研修に行き、実際によくなった患者さんの姿を見せていただくことで、私が想像していた以上の力をKM-CARTは持っていることを知ることがでたことも、大きな収穫でした。
松崎医師)
そう言っていただけて、嬉しく思います。
加藤医師)
見学に行く前は、インターネットでの講習だけで、ある程度、わかった気でいました。
しかし、「10リットル以上の腹水を、体内から抜く方法」「多量の腹水を処理する方法」は、実際に研修をうけて、とても腑に落とすことができました。
通常のCARTに比べると、若干ではありますが、手間暇はかかりますが、これだけ腹水による苦痛がとれるならば、非常に取り入れる価値がありますよね。
松崎先生)
ご指摘の通り、KM-CARTの実際のところは、見てみないと良さがわかりません。
百聞 は 一見に如かずです。
そして、ある程度の知識をもった前提で、見ていただければ、導入することは難しくありません。
加藤医師)
膵臓がんで、腹水が多量にたまっている方が、KM-CARTによる腹水治療をうけながら、抗がん剤治療で、がんが小さくなり、腹水がたまるペースがおそくなっていくという事例も、とても印象的でした。
腹水をへらした状態で抗がん剤をした方が、血液中の抗がん剤の濃度が高くなり、腹膜にあるがん細胞を、より叩くことができるということも教えていただきました。
抗がん剤の効果を高めるためにも、なるべく腹水をへらした状態で、治療を行うことが大事なのですね。
松崎医師)
そうなんです。
腹水は、症状がそれほど辛くないなら、がまんしながら治療を受けるというのが主流のようですが、そうではありません。
腹水を抜けるくらいに、たまっていたら、たとえお腹の張り感が強くなくても、腹水をぬいてから、抗がん剤治療をした方が良いのです。
ただし、単に腹水を抜くだけでは、体の免疫成分と栄養成分を、捨ててしまう事になるからダメです。
体の中に栄養分と免疫の成分を、体に戻すことを前提で、腹水を抜いてください。
加藤医師)
最後に、本日のKMーCARTのまとめとなりますが、
・どれだけたくさんの腹水があっても、ほぼ全量の腹水をぬいて、栄養成分と免疫成分を体に還元できる。
・症状緩和と、闘病意欲の回復が期待できる。
・腹腔内のがん細胞を減らす。
・腹水を制御することで、より高い抗がん剤の効果を期待できる。
ということになります。
先生の治療が、さらに広がることを祈っております。
本日は、ありがとうございました。