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食道がんの治療の流れ|症状と診断そして治療の流れを医師が解説

 2021/01/07 食道がん  

こんにちは。山本洋平と申します。消化器がん治療を専門として、小樽協会病院で勤務しています。

さて、食道がん治療の経験を踏まえて、食道がんの治療の流れと、食道がんを克服するためのコツを書いていきます。

食道がんの初期症状(自覚症状)

食道がんは、初期には自覚症状がないことが多く、人間ドックの内視鏡検査などで発見されることが、20%近くあります。

無症状で発見された食道がんは、早期であることが多く、治る確率が高くなります。

食道が、しみるような感覚は、食道がんの初期の症状です。

がんが、さらに大きくなってくると、食物がつかえるような感覚、胸の痛み・背部の痛み、声のかすれが、でます。

食道がんを疑う症状がある時の検査とは?

内視鏡検査

食道がんの症状がある場合は、内視鏡検査を受けることになります。その検査によって、食道がんが、あるか無いかは、はっきりします。

内視鏡検査で、異常所見がなければ、心配はないでしょう。

もし、食道がんを疑わせる病変があれば、疑わしい部位から細胞を採取しつつ、以下のことを確認します。

  • 病変の位置
  • がんが、どの程度広がっているか?
  • がんが、食道の壁にどの程度の深さまで食い込んでいるか?

食道がんが、かなり広い範囲に広がっていても、食道の壁に食い込んでいる程度が浅ければ、内視鏡的に切除できます。

食道の壁に食い込んでいる程度が浅いとは、食道がんが粘膜内にとどまっていることを指します。

また、内視鏡の検査は辛いことが多いので、鎮静剤という少し眠くなる注射をして、検査を受けるケースが多いです。

そのようにすれば、かなり楽に検査を受けることができます。

ここから先は、食道がんの診断になった場合の検査の進め方、並びに治療法を解説していきます。

食道がんにおける血液検査とは?

血液検査によって、以下のことがわかります。

腫瘍マーカー

食道がんではSCCやCYFRA (シフラ)などの腫瘍マーカーを検査します。

がんがあっても、必ずしも腫瘍マーカーが上昇するとは限りません。

腫瘍マーカーは、手術後の再発のチェックや抗がん剤治療の効果判定の参考に使われます。

臓器の機能が正常化かどうか?

腎機能、肝臓の機能の確認します。

もし、これらの臓器の機能が低下しているようであれば、手術や抗がん剤治療による合併症が起こりやすくなります。

手術が必要な場合は、手術に耐えれるかをみるため、心臓や呼吸の機能についても確認をします。

糖尿病がないかどうかも、チェックします。

糖尿病があり血糖値が高いときは、食道がんの治療の前に、糖尿病の治療を優先しないといけないことも、あります。

貧血はないか?

食道がんからの出血により、貧血になることがあります。

もし貧血が強いならば、輸血をしないといけません。

食道がんの超音波内視鏡検査とは?

内視鏡検査の1つです。

内視鏡の先端についた超音波装置を用いて、食道の壁の状態や、食道の外の状態を知ることができます。

その結果、以下のことを知ることができます。

  • 食道がんが、どのくらい深く広がっているか
  • 周りの臓器まで広がっていないか
  • 食道の外側にあるリンパ節に転移していないか

食道がんのCT検査

以下のことを確認するために、CT検査をします。

  • 臓器(肺や肝臓など)への転移の有無
  • リンパ節への転移の有無
  • 食道の周りの臓器(気管や心臓など)へ食道がんが浸潤していないか?

以上の検査結果を通して、治療方針をほぼ決定できます。

病院によっては、さらに、以下のような検査が追加されることが多いです。

食道がんのバリウム検査

バリウムをのんで、食道の形や粘膜などの状態を、X線写真で確認する検査です。

食道がんのPET検査

がん細胞は、ブドウ糖を取り込む性質があります。

そこで、放射性ブドウ糖液を注射し、それがどの部位で取り込まれるかを確認しようというのが、PET検査です。

放射性ブドウ糖液が取り込まれた部位に、食道がんはあると推測できます。

PET検査の結果、「CT検査では、問題ないと判断された場所」に、食道がんの転移が指摘されることがあります。

以上の検査をした上で、最終的な治療方針が決定されます。

検査結果より、以下のような状況であれば、食道がんを手術で取り除けることになります。

  • リンパ節の転移があったとしても、食道の周囲にとどまってるとき
  • 肝臓や肺といった臓器に転移がないとき
  • お腹や胸の中に、食道がんが、ばらまかれている所見(腹水や胸水など)がないとき

最後に、食道がんのステージごとの治療法の、大まかなことを、説明いたします。

ステージに応じた治療法

ステージの詳細は以下の通りとなります。


この項目では、ステージごとの食道がんの治療法を解説します。

参考:がん情報サービス〜食道がん治療

ステージ0の食道がんの治療方針

食道がんが、粘膜層という一番浅い部位にとどまっている場合は、ステージ0となります。内視鏡的な治療で、切除します。それにより、治癒します。

内視鏡で切除してみたら、粘膜筋板という部位や、粘膜下層という部位に、がんが食い込んでいたら、ステージ1に準じた治療を追加することになります。

ステージ1の食道がんの治療方針

胸腔鏡もしくは開胸による手術もしくは、「放射線治療+抗がん剤」が標準的な治療です。どちらも、治療成績は同じです。

おのおのの、治療の長所と短所を、主治医から説明を受け、納得した上で、治療法を選びましょう。

さて、手術や、「抗がん剤と放射線治療を同時併用療法」に耐えられるだけの体力がない方も、います。その場合は、放射線治療のみに、なることもあります。

放射線治療のみでも、完治する方は、います。

ちなみに、手術に伴う合併症で、死につながるものは、2〜3%の確率で発生すると、されています。

体力がないと、合併症は発生しやすいです。体力があって、手術に耐えられることを、しっかりと、評価してもらうことが、大切です。

また、手術のあとは、しっかりとリハビリをしてもらい、体力をつけることも必要です。

病院によっては、手術の翌日から、リハビリを開始します。

実際の手術のイメージは、国立がんセンターの動画がわかりやすいです。

ステージ2、ステージ3の食道がんの治療方針

以下のどれかによる治療になります。

・抗がん剤治療をしたのちに、胸腔鏡もしくは開胸による手術
・胸腔鏡もしくは開胸による手術をしたのちに、抗がん剤治療

2通りの方法を提示しましたが、最近は、75歳未満の場合は、抗がん剤治療をした後に手術を行うことが、主流です。

そして、一部のデータでは、75歳以上の場合は、先に手術を行った方が良いとされています。

ちなみに、手術単独ではなく、抗がん剤治療も組み合わせることには理由があります。

食道がんは、手術でがんを全部切除できたように見えても、その時点で、がん細胞が別の臓器に転移している可能性が高いです。

したがって、抗がん剤治療を組み合わせることが推奨されているのです。

そして、ステージ2の5年生存率は53.4%、ステージ3の5年生存率は26.1%です。

また、食道がんの手術は、非常に体に負担がかかります。

手術に耐えられない方は、以下のうちの、どちらかによる治療になります。

  • 放射線治療
  • 放射線治療+抗がん剤治療

ちなみに、ステージ2やステージ3の場合は、「抗がん剤+手術」による治療の方が、「放射線治療+抗がん剤」や「放射線治療」よりも、治療成績はよいです。

例えば、「放射線治療+抗がん剤」の場合は、1/3の方が再発すると言われています。

しかし、再発した場合も、救済手術というのを受けることで、完治にもっていけることもあります。

そして、最近になり、再発予防のために、オプジーボという免疫チェックポイント阻害薬を、1年間投与する治療ができるようになりました。

ちなみに、「放射線治療+抗がん剤」や「放射線治療」を受けて、がんを消滅させられないことがあります。そのような場合は、残ったがんを、手術で取りに行くということも、最近は行われるようになりました。

これを、救済手術といいます。

心臓や気管に食道がんが食い込んで、手術ができないときの治療方針

心臓や気管に食道がんが食い込んで、手術でがんを取り除けないときも、ステージ3に分類されることになります。

このような場合は、「放射線治療+抗がん剤治療」もしくは「抗がん剤」単独により、食道がんを小さくすることを試みます。

そして、食い込まないくらい、小さくなったら、手術をするという方針になります。

食道がんに用いられる抗がん剤は?

手術前に抗がん剤をする場合には、その場合は、ドセタキセル、シスプラチン、5-FU併用療法(DCF療法) が推奨されています。

ただし、3剤を併用すると、かなり体力を消耗しますので、「シスプラチン+5-FU」という抗がん剤が、用いられることもあります。

シスプラチンは副作用が強く、腎臓に負担を与えます。腎臓の機能が低下している方には、シスプラチンよりも副作用が弱い、ネダプラチンというお薬が用いられることもあります。

「シスプラチン+5-FU/LV」と「ネダプラチン+5-FU/LV」の治療成績は、ほぼ同じとされています。

ステージ4の食道がんの治療方針

ステージ4とは、肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。

手術による治療では、がんをすべて取り除けないために、抗がん剤治療が中心となります。

抗がん剤であれば、がんを倒す薬の成分を、体の血流にのって、体中にひろがったがん細胞に、行き渡らせることができるからです。

その治療により、体に広く散らばっているがんが、制御できたと予想される場合は、根治を目指した手術が、なされることも、あります。

食道がんは、完治を望める病気になりました。

食道がんは、以前に比べると、克服できる病気になってきました。

そして、食道がんに負けない体を作っていきましょう。

 

 

<参考文献>
東京慈恵医科大学 外科学講座 上部消化管外科 食道癌
http://www.jikeisurgery.jp/diseasegroup/upper-dig/esophagus/esophageal-ca/
愛知県がんセンター中央病院 いろいろながん 食道がん
https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/01shokudo.htmlhtt
がん研有明病院 がんに関する情報 食道がん
http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/esophagus.html
一般社団法人 国際医学情報センター がんinfo 食道がん
https://www.imic.or.jp/library/cancer/010_esophageal.html
国立がん研究センター がん情報サービス 各種がん102 食道がん
https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/odjrh3000000uj16-att/102.pdf
日本癌学会 【公聴会+パブリックコメント意見後】(禁複製) 食道癌診療ガイドライン
https://www.jca.gr.jp/researcher/topics/2016/files/Draft_20160913.pdf
岐阜県総合医療センター 食道がん
http://www.gifu-hp.jp/esophageal_cancer/#point07
京都大学医学部付属病院 消化器外科 食道がんの進行度
https://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/clinic-contents/%E9%A3%9F%E9%81%93%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC/194
大阪医科大学 一般・消化器外科 食道癌の診断と治療
https://www.osaka-med.ac.jp/~sur000/html/service/service01.html
文献:『食道がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ』国立がん研究センターがん報サービス

執筆医師:山本洋平
札幌禎心会病院の消化器内科医師

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門と同時に、呼吸器領域の治療にも知識が豊富です。

消化器病学会専門医、総合内科専門医、日本肝臓学会 肝臓専門医、消化器内視鏡学会所属

山本洋平医師の関わる論文

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